先生は、約70名のピアノ指導者で構成される「広島文化学園大学ピアノ指導者研究会」の代表も務めている。「新しい教材や指導法などについても、頻繁に情報交換しています」。こうした情報を学生たちに発信していくことも、自分の大切な役割と先生は語る。
末永先生のプロフィール
広島市出身。桐朋学園大学音楽学部演奏学科(ピアノ専攻)卒業。演奏家としても積極的に活動を続けており、2011年1月にはアメリカ・ベイラー大学でリサイタルを行った。趣味はドライブ。「先日は長崎の離島・壱岐に渡り、レンタカーで島を1周。朝焼けと夕焼けをカメラにおさめてきました」。かなりの行動派だ。

本棚にズラリとならんだ本は、すべてピアノの教本。「子ども一人ひとりにあった教本を選ぶには、子どもに対する深い理解と知識が必要です」。技術レベルや個性、好きな曲のジャンルまで把握して、最適な1冊を選ぶのだという。
| 末永先生の担当科目 |
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ピアノレッスン
ピアノレッスンメソード
ピアノ教材研究
音楽によるアウトリーチ活動
ピアノアンサンブル
ほか
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大好きなピアノを辞めてしまう理由
習いごとの中でも、ピアノの人気は常に上位を占めている。「子どもには、音楽に親しんで心豊かな人になって欲しい」という親の願いがそこにはあるようだ。ところが、現実はちょっと違う、と先生は顔を曇らせる。
「小学校低学年までは、みんな楽しそうにピアノに向かっています。ところが、高学年になると練習を苦痛に感じる子どもが増えてくるんです」
小学校高学年と言えば、ようやく足がペダルに届くようになり、曲のレパートリーも広がってピアノがどんどん楽しくなる時期なのに、なぜ?
「 基礎的な“音楽を楽しむ力”が身についていないのです。だから
“発表会で完璧に弾く”“コンクールで賞を取る”ということに心が縛られるようになる。楽しくなくなるのは当然です。実際、中学生になると、多くの子どもたちがピアノを辞めてしまうんです」
子どもたちに長くピアノを続けてもらいたい。先生はそのための教材や指導法の研究を行っている。
音楽を楽しむための二つの力
これは小学校や中学校などに出向き、子どもたちに音楽の楽しさを伝えるアウトリーチ活動での一コマ。子どもたちは、楽器の仕組みに興味シンシンだ。音楽学科では、4年生になると、授業の一環としてアウトリーチを体験する。 |
子どもたちが音楽を楽しむには、二つの力が欠かせない、と先生は言う。
「まず、楽譜を読む力です。読譜力がないと、曲が難しくなるにつれて楽譜を見るのが苦痛になりますから。そしてもう一つは、ホンモノを聴き分ける力です」
ホンモノを聴き分ける? なんだか難しそう・・・。
「そんなことはないですよ。たとえば、生演奏とテレビから流れてくる音はまったく違いますよね?」
そういえば、以前、生のオーケストラを聴いた時は、心臓にズン!と響くような感じがしたっけ。うん、テレビとは全然違う感覚だった!
「それがホンモノ。感情を動かすような力強さがあるでしょう」
ホンモノを聴き分けられれば、その音が目標となり、工夫しながら練習するようになるのだという。
二つの力を身につけた子どもは、挫折することなくピアノを続けられる。だからピアノ教師を目指す学生たちには、こうした指導ができる人になって欲しい。先生の言葉の端々から、そんな思いが伝わってきた。
聴いてくれる人がいる。だから音楽は楽しい
先生は、老人ホームなどでボランティア演奏を行っている。学生たちも積極的に参加し、先生をサポートしてくれているそうだ。先日そこで、あるエピソードが生まれた。
「突然、会場から“音楽なんか聴きとうない!”という声が聞こえてきたんです。声の主は認知症のおばあさんでした。介護士の方がなだめてもダメ。結局その方は、憤慨した様子で会場を出て行きました」
ところが、最後の曲「千の風になって」の演奏を終えた時、誰よりも大きな拍手を送ったのは、いつの間にか席に戻っていたあのおばあさんだった。
「私たちの手を握り、泣きながらおっしゃるんです。『良かった。本当に良かった』って」
学生たちも、目に涙を浮かべながらその手を握り返したという。おばあさんの思い出の曲だったのだろうか・・・。理由は分からないけど、先生たちの演奏が、おばあさんの感情を動かしたのはたしかだ。
「演奏を聴いてくれた人と心が通じ合った時、音楽はもっと楽しくなる。その瞬間を体感するためにも、子どもたちにピアノを続けて欲しい」
と語る末永先生。先生のように音楽の本当の楽しさを伝えられる教師を、これからもたくさん育ててください!
「ピアノレッスンメソード」の授業では、近隣の子どもたちを生徒役に招き、学生たちがピアノを教えるというカリキュラムも。最初はぎごちなかった学生たちも、子どもとのコミュニケーションの取り方、分かりやすい教え方などを、実践の中で学びとっていく。