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2011年度 掲載 

近畿大学工学部 

建築学科

市川ゼミ

環境設計研究室

市川尚紀先生のもとで「伝統的集落・民家」「パッシブデザイン」「水辺の社会実験」「設計」と、大きく分けて4つのテーマで研究を進めている。その他にも「自然と共生する建築のあり方」など、各自の興味・関心を生かしたテーマに取り組んでいる。

自然と共に暮らす家づくり、町づくりを学ぼう!

先人の知恵に学ぶパッシブデザイン

 市川先生の専門の一つ“パッシブデザイン”。これって、なんですか?
 「設備機器に頼らず、風や太陽光などの自然エネルギーを活用して、快適な居住空間を生み出す設計手法を指します。ヒントは伝統的な民家建築。地域の気候風土に根差した民家には、先人の知恵と工夫が詰まっています」
 寺社仏閣などの有名建築についてはすでに膨大な資料があるが、一般の民家についてはほとんど調査されていない。そこで、先生やゼミ生たちは日本やアジアの集落を巡り、調査を行っている。


 

雨水と自然エネルギーで
室温28度の冷房を実現

 例えば、犀川くんは「自然エネルギーと雨水を活用した冷暖房システム」の開発に挑戦している。
 犀川くんが案内してくれたのは、キャンパス内につくられた実験住宅。
 「地下には4トンの雨水を溜められる貯水槽があります。また、屋外には1トン分のドラム缶5本を埋め込んでいます」。
 へえ、その水、どうするんですか?
 「夏は地中熱で冷却し、冬は太陽熱温水器で温めて循環させるんです」
 これで、気温34度の真夏日でも室内温度は28度を維持できることが確認できたという。
 「次は冬の暖房実験。もう、寒くなるのが待ち遠しくて!」
 天候次第で思い通りに進まないこともあるし、朝から夜まで実験漬けになることもある。それでも、研究の手ごたえを感じている犀川くんの表情は、とびっきり明るい。

犀川くん(4年生)

本物さながらの実験住宅。雨水を使う方法は、ヨーロッパの民家からヒントを得たそうだ。貯水槽とドラム缶はパイプでつながっている。濾過した雨水を貯水槽に蓄え、貯水槽が一杯になると、ストック先がドラム缶へ切り替わる仕組みだ。


都心再生のアイデアコンペで大健闘

 旧広島市民球場が移転を受けて、広島市の中心部は大きく変わろうとしている。この空間を活用するアイデアコンペが、7月に行われた。杉森さんと小阪くんもタッグを組んで参加した。
 「原爆ドームに隣接する公園は、広島の人にとって大切な場所。設計に入る前に、そこに刻まれた歴史を知り、平和について考えようと、資料を調べながら2人で話し合いました」
 意見が衝突して、作品をイチから手直ししたこともあったけど、お互いの意見をぶつけ合えたことで、逆に連帯感が生まれたという。結果は72作品中12位。現役の設計士や大学院生がひしめくなかで、大健闘だ。
 これまではデザインのカッコ良さにばかり気を取られていたけれど、コンペを経て、空間の用途や地域と建物の連携を考えるようになったという杉森さん。これからいよいよ卒業設計に取りかかる。前期の経験をバネに、どんな作品が出来上がるのか楽しみだ。

杉森さん(4年生)

市川ゼミで水辺の建築設計にも興味を持つようになったという杉森さん。風邪でお休みの小阪くんの分まで、しっかりコンペの説明をしてくれた。

 

水辺ににぎわいを創り出す研究

土井さん(大学院2年生)

 大学院生の土井さんは、河畔や湾岸に店をつくり、水辺ににぎわいを創り出す社会実験について研究している。広島や大阪、福岡、千葉に足を運び、調査を行った。
 「現地を調べて痛感したのは、キーマンの重要性。先頭に立って推進する人がいれば、事業のスピードはまったく違ってきます」
 以前は法律の規制があって、水辺に建物を作ることができなかったそうだ。水辺空間を活用しようという動きが始まったのは、ごく最近。しかし、景観を損なわず、市民にも出店企業にもメリットを生みだすにはさまざまなルールや仕組みが必要になる。社会実験を通して、そうしたルールを固めていくのだ。
 各地の実験が成功すれば、地域がにぎわうだけでなく、自治体の収入が増えて住民の税負担が少なくなるし、川をきれいにしようという住民の意識づくりにもつながる。"水辺"という限られた場所への仕掛けが生み出す効果は大きい。


生活や伝統を踏まえた建築も面白そうだ

中原くん(4年生)

 中原くんのテーマは"干棚"の調査。高知県・沖ノ島の民家には、"干棚"と呼ばれる物干し台を広くしたようなスペースがある。もともとは野菜や魚を干すためのものだったが、いまではご近所さんとの交流の場として活用されているそうだ。この干棚をマンションなどの集合住宅の設計に活かせないか、と中原くんは考えている。


伊達くん(4年生)

 瀬戸内海に浮かぶ高見島(香川県)は人口100人の小さな島だ。島の面積のほとんどは標高300メートルの山で占められ、人々は平地だけではなく、傾斜のきつい山の斜面にも集落を作り、暮らしている。厳しい環境の中で生活する住民の知恵と工夫を掘り起こそうと、伊達くんは、現地を訪れ予備調査を行ってきたところだ。


中塩さん(4年生)

 日本最古の木造建築・法隆寺を、中塩さんは独自の視点から見直してみた。「北で伐採された木は建物の北側に、南で伐採された木は南側に。木が育った環境を、そのまま建築に生かしているんです」。まさに"適材適所"。法隆寺は、自然と共生する建築のあり方を探究する中塩さんの原点だ。

今年9月には、ゼミのみんなで沖縄を旅行した。リフレッシュしたアタマとカラダで、卒業研究に全力投球だ!

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